ANNAPURNA ~マルハン家の食卓~

食生活の記録@インド/アンナプルナとは、サンスクリット語で「たくさんの食べ物を供する豊穣の女神」を意味します。

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薄々、気づいていたのだ。そう、このブログをお読みのあなたも、お気づきだったかもしれない。「インド料理が少ない」ということに。ミューズ・リンクスのセミナーの際の、調理実習でチキンカレーを作ったのが最後だったか。

インドの家庭料理は、薬膳のようなものである。

スパイスは、身体にもよく、そのときどきの家族の体調に合わせて調整できる。

などと語っている割に、さほど作っていないインド料理。

金曜の夜のことだ。夫が、さりげなく切り出した。

「ねえ、みほ。週に1、2回、北インド料理を作る料理人に来てもらわない?」

と。いくら日本料理が好きでも、コンチネンタルがノープロブレムでも、たまにラジマやチャパティが食べたいという。確かに。そらそうだろうな。

珍しく、反省する妻。気づかないふりをしていた。インドだから、インドの外食で思う存分インド料理が食べられるのではないか。とお思いの方もあろう。夫は悲しいかな、胃腸がさほど強くなく、「辛いもの」が苦手ゆえ、外食でインド料理を食べると、お腹の調子を悪くするのだ。

あくまでも、北インドの家庭料理である。

北インドの料理人に頼む前に、週に一度、わたしが北インド料理を作ることにした。実はインド移住直後の1年余り、我が家は料理人の男性を使用人として雇っていた。わたしたちがインド移住するにあたり、デリーの両親が、北インド出身の彼を手配してくれていたのだ。

ほぼ毎晩、のインド料理に、わたしは相当に、疲れていた。キッチンは、彼の城、である。週に一度ほどは自分でも料理をしていたが、だんだん耐え難くなっていた。そのような状況を逆手にとり、彼にインド料理を学び、日本人のご夫人向けに「ミューズ・クッキングクラス」を実施していた時期もあった。

最終的には、料理は自分でどうしても作りたいと思い、また、料理ができないとなると、使用人としてだけではバンガロールにいたくない、という彼の意向もあり、諸々の経緯をへて、彼は帰郷した。

当時のレシピはもちろん手元にあり、ときどき、作ることもあった。しかし、ここ数年は、1、2カ月に一度の割合である。

そんな次第で、日曜の午後。久しぶりに圧力鍋(中サイズ)を取り出す。ラジマ、と呼ばれる豆をまずは煮るのだ。一晩、水につけておいた豆を圧力鍋へ。比較的多めの水を入れて焦げ付くのを防ぐ。

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我が家の大型の圧力鍋は、一般のものと同様、沸騰したら、数分おきにシュ〜ッと盛大な音を立てて蒸気を抜くが、この中型タイプは、蒸気機関車の如く、常にシュッシュッシュッシュッと、小さめの音を立てる。心臓に悪くない。

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火の通りが悪いインドの豆も、フワフワに炊きあがった。味見をすると、おいしい。これもまたオーガニックの豆だ。おいしいあんこができそうでもある。ついつい砂糖を加えたくなる気持ちを抑えて、今日はインド料理なのだ。

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ラジマは風味を強くしたかったので、オイルにシナモンやベイリーフ、カルダモンを入れて、香りを移す。そのあとに、玉ねぎのみじん切り(ペースト)を加え、しっかり火が通ったところで、ショウガとニンニクのペースト、塩、そしてキュミン、コリアンダー、ターメリックのパウダーを入れる。

これで、カレールー、の出来上がりだ。

これらをなじませたあと、トマトのみじん切り、もしくはおろしたもの、あるいはブレンダーにかけてジュース状にしたものを、いれる。

最後に豆を入れて、出来上がり。チキンカレーと似ている。

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というわけで、チキンカレーも同時進行で作る。こちらはトマトを入れたあとの様子。これに丸ごとの鶏肉をさばいたものを、どさっと入れて、煮込む。水は入れない。

鶏肉の、ササミや胸のパサパサした肉のあたりは、猫らのためにボイルしておく。と、NORAがすかさずやって来る。鼻が利くお方だ。

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「写真はいいから、早くください」

と、相変わらずの目ぢからだ。

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見た目、美しさに欠けるが、チキンカレー。最後にヨーグルトを加え、塩加減を整え、場合によってはガラムマサラなどを加えて調味する。

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さらに地味な、ラジマ。

なにか、「緑」な野菜が欲しいところだが、もう今日はこの2品とチャパティでよしとしてくれ、である。

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食卓で撮影するも、なにやら「どんより」だが、夫は大喜びだ。

「おいしそう!」

「おいしい!」数回。

更には、

「しあわせ!」

とまでも。知っている「幸福感を表す日本語」が連発だ。といっても3種だけど。

前日の日本酒のセレモニーでは、参加者の日本人に、自分がいかに日本料理を好きか、を語り、ニューヨークの日本料理店の話に始まり、昨年の九州旅での食の話題、更にはムンバイのWASABIの様子などを、克明に語る。

「熊本では、辛子レンコンや馬肉にも挑戦しました。おいしかった」だの「長崎では、卓袱料理がユニークでしたね」だの、「鹿児島の黒豚のトンカツは実においしかった」だの、「妻の故郷は、とんこつラーメンで有名ですからね」だのと、もう、正直、わずらわしいほどだ。

一生、日本料理だけ、食ってろ!

と、思わず妻は心中で叫ぶのであったが、ともあれ、日曜の夜。夫の要望に応えて、彼のソウルフードであるところの北インド家庭料理に回帰したのは、よかった。

翌朝も、残りを弁当につめ、チャパティだけは焼き直し、冷めてはまずいだろうと思いつつも、まあ本人が食べたいというのだから、いいだろう。

北インド家庭料理を、これからは心がけて作ります……。