ANNAPURNA ~マルハン家の食卓~

食生活の記録@インド/アンナプルナとは、サンスクリット語で「たくさんの食べ物を供する豊穣の女神」を意味します。

✈︎ 過去ブログ/2005〜2025

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    NHK連続テレビ小説『まんぷく』を、毎朝、オンラインの動画で見ている。インスタントラーメン(即席ラーメン)を生み出した日清食品の創始者である安藤百福とその妻がモデルとなっている。

    長い長い紆余曲折を経て、ようやくチキンラーメンの完成にたどりついた今週。

    朝からラーメンが食べたくて仕方がない。日本では間違いなく、チキンラーメンが爆発的に売れていることであろう。

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    そして昼過ぎ。矢も楯もたまらず、別の料理のために準備していたポークスペアリブの骨の部分だけを削り取り、スロークッカーに入れる。夕方すぎには、いいだしが出ていた。これにいただきものの茅乃舎の鶏スープも加える。そしてしょうゆ、塩、バルサミコ酢少々で味付け。

    「とんこつラーメン研究会」で作った濃厚とんこつスープほど白濁しておらず、風味は強くないが、これはこれであっさりと、しかしコクあるラーメンの完成だ。

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    なにしろ気の利いた麺がないので、インドではスイーツなどに使われる極細パスタを茹でる。ベーキングパウダーを加えて茹でる。矢野顕子の名曲『ラーメン食べたい』を歌いながら茹でる。

    「男も辛いけど〜 女も辛いのよ〜♪」

    麺は、インドでも簡単に入手できるBARILLAのエンジェルヘア・パスタの方が、コシがあっていいかもしれないが、これはこれでおいしい。夫も喜んで食べている。とりあえず、ラーメン欲がひと段落した。よかった。

    *今、『ラーメン食べたい』の、もんのすごい動画を見つけて聴き入っている。1984年に発売されたアルバム「オーエスオーエス」のLPは、発売直後に購入した。ジャケットが花に満ちて愛らしく、いい音楽ばかりだった。オリジナルの『ラーメン食べたい』もいいけれど、これもいい。鳥肌が立つ。そしてラーメンにネギを入れ忘れたことを思い出した。庭で栽培しているのに! 

    🍜矢野顕子のラーメン食べたい:その1(ドラムが!)
    https://www.youtube.com/watch?v=9MsAh3T8iuw

    🍜矢野顕子のラーメン食べたい:その2(ピアノが!)
    https://www.youtube.com/watch?v=A4wbeSH8jDM

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    夫はムンバイ出張中で、帰宅は早くても午後8時を過ぎる。スパークリングワインくらいは用意しておくつもりだったが、夕飯は何か適当に、のつもりだった。

    妻は来週半ばからの国外旅行を控えて、何かと立て込んでいる。日曜日には「宗教勉強会」というのも実施する。わたしは「インドの中心〈ナーグプル〉で仏教を叫ぶ」の資料準備中だ。ミューズ・クリエイションの駐在員男子(クリスチャン)は、キリスト教を語ってくれる。ホームページ作業に続き、デスクワークが波に乗っている時に、料理のことはあまり考えたくない。

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    ところが、朝。すんばらしく美しいバラの花束が届いた。ムンバイから夫が注文してくれたらしい。鬼嫁は、たちまち怪獣、いや懐柔される。

    夫に電話をしてお礼を言い、「夕飯は何が食べたい?」と尋ねる。「なにかおいしいもの」と夫。その、「なにかおいしいもの」という丸投げ感が、実は手強い。

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    冷蔵庫を開けたところ、先日作っておいた「かんぴょう(乾燥したもの)」を見つけた。今夜の夕食は、巻き寿司にしようと閃く。実はわたしは、巻き寿司初心者だ。つい最近、卵巻き寿司などを何度か作ったが、経験値は極めて低い。

    そんな中、昨年末、ミューズ・クリエイションのメンバーが持ってきてくれた巻き寿司の中の「かんぴょう」の味わいが、気になった。……そもそも、かんぴょうって、何? 何からできてるんだっけ? メンバーによると、瓜科の植物から作られているという。

    後日、気になって調べてみた。すると、俄然、作ってみたくなった。瓜っぽいのはインドにもたくさん売られている。早速、BigBasket.comで注文し、輪切りにして皮をむき、干してみたのだった。晴れた日だったので、1日で完全に乾いた。作ったものの調理には至らず、冷蔵庫に眠っていた。

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    いくらなんでもかんぴょう巻きだけでは地味すぎるので、エビと豚肉と卵も使うことにした。何もかも一緒にした太巻きだと、味の違いが楽しめないので、大きく3種類に分けた。

    ・豚バラ肉とキムチを細かく切ってごま油で炒めたもの&アスパラガス
    ・卵とインゲン豆とかんぴょう
    ・茹でたエビとインゲン、かんぴょうとマヨネーズ
    ・残りをまとめたもの

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    細々と手間をかけて作った割には、見た目が地味だ。キャベツのサラダも作ったが地味だ。味噌汁の椀の華やかさと、スパークリングワインと花に演出を任せるほかない。

    巻き寿司は、どれも素朴においしかった。人気は味の濃い豚キムチ巻きだった。

    改善すべき点はといえば、ご飯はなるたけ薄く敷くこと。具の味付けはかなり強めに。かんぴょうは多めに巻き込まないと存在感が薄い。あと、卵の黄色が弱いので、ターメリックを少し混ぜるといいだろう。また赤いパプリカなどを茹でて使うなど、色味に華やかさを持たせた方が食欲をそそりそうだ。レタスなどの葉野菜も使いたい。

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    上質の日本米と海苔の味が決め手ともなる巻き寿司。海外在住者にとっては、決して「気軽に」とは言い難い料理ではあるが、近々インド人の友人らを日本食でもてなすので、巻き寿司のヴァリエーションを増やしておきたいところだ。

    そんな次第で、23回目のヴァレンタインズ・ディナー。今年もそこそこ平和なひとときであった。

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    🌞日本の約9倍の国土面積を持つインドは、ただ広いというだけではない。異なる気候と土壌、食文化を背景に、極めて多様性に富んだ農作物が育まれている。

    🌞1991年、経済自由化政策により市場が解放された結果、徐々に海外の食文化が浸透する一方、モンサント社をはじめとする欧米の「農薬会社」が進出。一時期は農作物が高収穫を誇ったものの、綿花農業などは顕著に悪影響を受け、余剰生産その他、数々の問題が発生した。農民らが農薬を煽って自殺するというニュースは社会問題ともなっている。

    🌞米国企業などが運び込もうとした「単一作物の大量生産(モノカルチャー)」即ち大規模農園は、インドの風土や食文化に適さない。農業一つをとっても、この国はこの20数年のうちに、ダイナミックな試行錯誤を繰り返している。

    🌞インスタント食品、加工食品の台頭と停滞にしても然り。食文化の温故知新にしても然り。食生活のグローバル化は進む一方だが、新旧を巧みに混在させ、「サステナブル」で「エコロジカル」な、昔ながらの土地の特徴を重んじ守りつつの「農業の新しい姿」が追求され始めてもいる。

    🍛インド料理といえばカレー、カレーといえばスパイスが閃くばかりというのが、外国人から見るインドの食文化の印象だろう。しかし暮らしてみれば、この国の農作物の多様性を目の当たりにし、その豊かさに感嘆するばかりだ。

    🍛穀物、豆類、野菜に果実、オイルにスパイスなどはもちろんのこと、乳製品、ティー、コーヒー豆、カカオ、ワインなどの嗜好品、昨今では各種スーパーフードなどを、この国では自給自足できている。魚介類、肉類にしても然り。先日も記したが、インドはブラジルと並んで世界最大の食肉牛輸出国でもある。

    🍛インドの食料自給率は軽く100%を超えている。13億人の生命を支えるだけの潜在力がある。

    🍛従来は製法の問題、ロジスティクス(輸送)の問題などもあり、普く国民に届かなかったものが、昨今のインフラストラクチャー整備によって流通網も構築されつつある。それに加えてEコマースの台頭により、これまで店舗では目にしなかった食材を、自宅に届けてもらえる利便性が加わった。即ち、「調理法」や「食べ方」さえ工夫すれば、この国では廉価でおいしい食生活がたやすく実現できる。

    🍪前置きが長くなったが昨日土曜日。夕方、ゲストが来訪することになっていたが、気づいたら「お茶菓子」がない。お隣タミル・ナドゥ州の農園で生産されたカカオ豆で作られたチョコレート、SOKLETのダークチョコレートがある。ちなみにこのブランドは、カカオの木から育てて、カカオ豆を収穫、チョコレートを製造するインド初のブランドだ。今や、インド産のカカオ豆を使用したアルチザンチョコレートのブランドは少なくない。

    🍪さて、いくらおいしいからといって、板チョコをゲストに出すのも味気ない。もっとも簡単に作れるお菓子ということで、チョコチップクッキーを作った。自宅にあるオーガニックの小麦粉に砂糖、オーガニックバター、フリーレンジの卵、そしてサクサク感を出すためのコーンパウダーとベーキングパウダー少量を全部まとめてざっと混ぜ合わせる。ベーキングシートにポトポトと落とし、小さく切ったチョコレートを載せてオーヴンで焼いて出来上がり。食材のよさが手伝って、ごく簡単に、おいしいおやつの完成だ。

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    🍸夜はインディラナガールにある友人夫婦宅を訪れた。トゥシャールが作ってくれた、非常においしいカクテルを飲みつつ、彼が手がけるビジネスの一つであるヘルス・アプリ(HealthifyMe)のスナックを味見する。インドでは昔から食べられている「蓮の実 (MAKHANA) 」のスナックだ。ポンポン菓子のような軽やかなそれは、軽くヒマラヤの岩塩で味付けされているだけなのだが、香ばしくておいしい。その上、極めて栄養価が高いことでも知られている。

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    🍀10時を過ぎてようやく、夕食をとりに徒歩数分の場所にあるレストラン、Sante Spa Cuisineへ。店名からも察せられるとおり、オーガニックの食材を用いたヴェジタリアンで、ヴィーガン料理も出す。3カップル揃って日本料理が大好き、毎週のように寿司だ刺身だを食べている彼らは、「超ノン・ヴェジタリアン」ではあるのだが、トゥシャールが、この店の料理は特筆すべきだというので訪れたのだった。

    🍀すでにムンバイやプネ、ハイデラバードやチェンナイに店舗を持つこの店。プレゼンテーションの楽しさ美しさ、食材の豊かさ面白さ、味付けの繊細さ巧みさが秀でていて、どれもおいしい! 昨今のインド都市部は、このような健康志向のレストランが増えているが、この店は画期的だ。メニューの一つ一つを説明したいところだが、この辺にしておく。近所にあればしばしば通うであろうクオリティの高さだ。

    🍀インド。住めば住むほどに好奇心がかきたてられ、あらゆるジャンルにおいて、新しい発見は尽きない。不都合を補って余りある刺激。本当に、おもしろい。

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    昨年末から準備していたイヴェントをようやく終えて、チャイニーズ・ニューイヤーに合わせるように、新年を迎えた気分の今週。今朝のFM熊本の収録を皮切りに、今日は日本とのTV会議も控え、本業も本格始動だ。今年から週に一度の予定で書き始めた『異郷の食を巡る記憶』も、まだ3本書いたきり。素材は何百本もあるがゆえ、時間を見つけて綴り続けたい。

    🍛 🍛 🍛

    ところで昨夜は、久しぶりに「激ウマ創作料理」を作って、自画自賛しつつよく食べた。

    先日、使い切れず冷凍していた豚の塊肉を解凍していたら、「ポーク・ビンダルー」という言葉が浮かび上がった。

    西インドのゴアは、かつてポルトガルの統治下にあった。そのゴアにポルトガル人がもたらした料理がインド流にアレンジされたものだ。

    ビンダルーは、「酢を使っている」ことが特徴。あと、ポルトガル料理はほんの少し甘かった気がするので、ジャガリを加えることにした。

    レシピをざっとネットで調べてみたが、なんだか面倒臭い。そもそもそれが、自分の求めている味とは限らない。というわけで、自分の勘に任せて、いつものチキンカレーをアレンジする感じで作ることにした。

    脂がのった豚塊肉を一口大に切り、バルサミコ酢、ターメリック、コリアンダー、キュミンパウダー、砂糖、塩、生姜&ニンニクすりおろし、ヨーグルトでマリネする。

    オイルを加熱しつつ、目にとまったスパイスを適当に投入。

    玉ねぎを炒め、トマトを投入。本当は、玉ねぎがこんがりするくらいにじっくり炒める方が甘みが出るのだが、うっかりトマトを入れてしまった。

    トマトはすりおろすかブレンダーにかけてジュースにするのが理想的だが、煮込んでいたらどうせ溶けるので、ざく切りでもノープロブレム。

    マリネした豚肉をいれる。

    冷蔵庫に昨日使い損ねていたマッシュルームを見つけた。合いそうな気がしたのでスライスして入れる。

    煮込む。煮込む。煮込む……。

    するともう、ほのかに日本のカレーを思わせる、しかし無添加、オイルも控えめ、ヘルシーな逸品が出来上がった!

    最後に、お気に入りのマサラパウダーなどで味を整えて完成。

    チャパティを焼きながら、むしろ日本米を炊けばよかったと後悔する日本的な味わいだ。

    付け合わせはベビーコーンとアスパラガスの炒め物。

    夫婦揃って何度もおかわりをして、大満足の夕食であった。新鮮なスパイスだけで、日本風のカレーを再現すべく、研究してみようかしらんと、朝ドラ『まんぷく』を見ながら研究心をささやかに刺激されるのであった。

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    🍶思えばインド男性で「俺、甘いもの苦手」という人に出会ったことがない。日本では「酒飲み」=「甘いものが苦手」という傾向がまことしやかに語られていた気がするが、実際のところはどうなのだろう。インドの人たちは、老若男女問わず、無条件に甘いもの好きが多いと思う。もちろん酒飲みであれ。

    🍰ストロベリーシーズン真っ盛りにつき、マルハン家の今月のお菓子「ショートケーキ」を準備。

    🍎2年前、パパが来た時に作った「アップル・クランブル」をまた作ろうかと思ったが、ふわふわのショートケーキも食べて欲しい。アルヴィンドもパパも、父子揃ってりんご系の焼き菓子が好き。アルヴィンドは、子どものころに、亡母が作ってくれたアップル・プディングの味が忘れられないようだ。

    🐟昨夜のメインは毎度おなじみのインディアンサーモン。友人からいただいた「塩麹」をぬりぬりして冷蔵庫にいれておく。下準備さえしておけば、オーヴンに入れて焼くだけの便利さ。生姜の千切り、ネギとマッシュルームなどを適当にちりばめ、焼き上がりにつーっと醤油を垂らすだけの簡単さ。

    🧂カリフラワーは、ほんのりインド風。北東インドはマニプール産の石鍋(ウェザーストーンという石でできた鍋で、料理をおいしく調理してくれる。保温効果もあり)に、やや多めの油をひき、キュミンシードを加えて加熱する。そこにカリフラワーを加えてじっくりと加熱するだけ。味付けはヒマラヤの岩塩のみ。

    🍛キュミン(クミン。ヒンディー語でジーラ)は、風味をよくするだけでなく、消化を促したり、記憶力を高めたり、抗菌効果があったりする。もっともキュミンに限らず、インド料理に使われるあらゆるスパイスに、それぞれ薬効がある。この簡単な炒め物にターメリックパウダーを加えれば、さらに料理の効能が上がる。いずれにしても、油脂さえ控えれば、インドの家庭料理は、日々薬膳料理だ。

    🌱ご飯は香り豊かな高級インド米(といっても廉価)、バスマティライスを炊く。豆ご飯を炊くつもりが、ビッグバスケットの宅配サーヴィスが間に合わず、ご飯だけ炊き始めていた。そこにグリーンピーが届いたので、急いで皮をむき、豆だけ別に茹でて、最後にご飯と混ぜ合わせた。このやり方、悪くない。むしろ豆だけに塩味が染みる上、豆が崩れないからいいかもしれない。

    🥢ワカメだけの素朴な味噌汁はマグカップに入れて洋風スープ状態。ワカメは主に、わたしと夫向け。まろやかな味わいが好評だった。

    🍷ラベルのないロゼワインは、夫が先日、バンガロール郊外のワイナリーSoma Vineyards に1泊滞在した時に購入してきたもの。この件については、また改めて言及したい

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    夫の会社からそう遠くない場所でランチ。

    1MGモール最上階の、このカジュアルダイニング Cafe Felix は、一度訪れて、その眺望のよさが気に入った。

    中空から見下ろせば、この町もそこそこ、麗しく見える。

    夫がオフィスに戻った後、ロメイシュパパとウマとでショッピング。

    帰路、昔ながらのバンガロー(平屋邸宅)を改装して造られたブティック群「シナモン」に立ち寄る。

    まるでリゾートで撮影したかのような二人の写真。

    パパは3月で79歳。夫婦揃って、元気でなによりだ。

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    デリーに暮らす義理の両親が来訪。約1カ月前にデリーを出て、家族の住むチェンナイを起点に、スリランカやタイを旅し、旅の最終地点にバンガロールへ。夕飯は、外食続きだろうからと、野菜たっぷり、あっさりとした食卓にした。

    異文化に生まれ育った我々夫婦は、何かにつけて衝突し合ってきたが、「食」に関してだけは、出会った当初から、嗜好が極めて近かった。

    「子は鎹(かすがい)」ならぬ、「食は鎹」である。これは、極めて幸運なことだ。

    一般的には食文化が大いに異なる日本とインド。しかし、夫とだけでなく、夫の両親や姉夫婦、親戚と旅行などで共に過ごしても「嗜好が合わない」ということは、ほとんどない。

    今から20年近く前のこと。家族揃って、イエローストーン国立公園へ旅行した。普段、インドではおいしい牛肉が食べられないからと、義姉の家族がビーフステーキやハンバーガーを、もりもり食べていたことを思い出す。食後のデザートも欠かさぬ一家の食欲に驚きつつも、共に楽しんだ。

    インド人は、一般に辛いものが好きだと言われるが、我が夫も、義理の父も「スパイシーな料理」が苦手。ゆえに家庭料理はほとんどチリを使わない。たまに外食で、辛いものを食べたりすると、義父は額から滲む汗をハンカチで拭き拭き、夫は何度もしゃっくりを繰り返し、なにかと落ち着かない。

    ゆえに、わたしが作る、こざっぱりとしたお惣菜も、喜んで食べてもらえる。

    メインは丸鶏を捌いて、玉ねぎとマッシュルームで煮込んだもの。味付けは、和風に見えて、実はオリーヴオイルとバルサミコ酢が利いた「洋風」だ。

    野菜炒めも、オリーヴオイルと自家製粒胡椒、そして茅乃舎の野菜だしが利いた、ほぼ「洋風」。

    茹でたほうれん草を、ほんの少しのマヨネーズと醤油で和え、ゴマと七味唐辛子をほんの少しだけかけたものや、白菜の「数時間漬け」サラダも添えた。こちらは、敢えて言えば、「和風」。ご飯は、Happy Health Meで買った五穀米ならぬ四穀米。

    作りすぎたかと思ったが、4人でほとんど完食。

    ところで、我が食の記録を久しくお読みの方はお気づきかと思う、この和風の食器。料理が「いい感じ」に見えると思うが、どうかしらん。

    日本から食器を買って帰るというのは、いつも優先順位から低くなり、気がつけばもう、いい大人になっていた。ゆえに、帰国時を狙わず、インドで購入しようと、少々割高ではあるが、Nicobarというお気に入りのブランドで買い求めた。

    食器洗いをメイドに任せることが多く、割れにくくシンプルな皿ばかりを使っていたが、味気なかった。これからは、食器棚の奥に眠っていた、お気に入りの食器も取り出しつつ、これらは自分だけが触るものとして、大切に使おうと思う。

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    初の海外取材先である台湾からの帰国後は、それまで以上に苛酷な仕事が待っていた。寝ても覚めても編集作業に追われる日々が続いていたころ。新年明けてまもない寒い朝、昭和天皇崩御のニュースが届いた。昭和が終わり、翌日から平成がはじまった。バブル経済のピークを迎えていた当時の日本は、不自然に浮かれていた。街ゆく若い女性たちは、ワンレングスの長い髪にボディコンシャスなワンピース、高級ブランドのハンドバッグを携え煌びやかだ。安い衣類に身を包み、概ね疲労していたわたしにとって、そんな浮世の趨勢は、遠くから聞こえる太鼓の音のようだった。

    台湾のガイドブックが校了した直後、一息つくまもなく、シンガポールとマレーシアの取材を命じられた。どんなに多忙でも、海外出張に行けることは、うれしかった。取材前に不可欠なのは情報収集。書店や図書館で関連書籍を入手し、未知なる国の情報を得る。観光事情に関しては、都内にある各国の政府観光局を訪れ、地図やパンフレットなどを収集した。

    シンガポールに関する知識がほとんどなかったわたしにとって、得られる情報すべてが新鮮だった。シンガポールもまた台湾同様、大日本帝国の影響を受けていた。シンガポールは1819年、イギリス東インド会社の書記官だった英国人トーマス・ラッフルズの上陸を契機に、大英帝国による植民地時代が始まった。第二次世界大戦中の1942年に英国支配は終焉。代わって大東亜共栄圏の構築を目指す日本軍による占領が始まり、シンガポールは「昭南島」と改名された。シンガポールを象徴する高級ホテル「ラッフルズ・ホテル」は接収後、「昭南旅館」と呼ばれ、日本陸軍将校の宿舎となった。同国の日本統治は、1945年8月の日本の敗戦まで続き、以降は再び英国の支配下に戻った。完全に独立したのは1965年、わたしが生まれた年のことだ。

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    シンガポール取材は、年上の男性編集者と外部カメラマン2名の計4人が2班に分かれて行われた。シンガポールは、東京23区より少し大きいくらいの国土面積であることから、全容を把握しやすく、移動は比較的、楽だった。観光地やレストラン、ホテル、ショップなどを片っ端から取材したのだが、年上の男性編集者が、「おいしいとこ取り」をしていた。人気店の大半を自分が担当し、残りをわたしに回していたのだ。今、当時のガイドブックを開けば、「チリクラブは、ほんと旨い」とか「フィッシュヘッド・カレーは最高」とか「ペーパーチキンは絶品」とか「あのチキンライスは抜群」といった彼の言葉が、30年経ってなお、忌々しくも鮮やかに思い返される。

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    残念な記憶の一方で、シンガポールでは目に映るものすべてが、日本と同じアジアの国とは思えぬ多様性に満ちていて、興味深かった。英国統治時代の影響を受けたコロニアル様式の白亜の建築物が目を引く一方で、漢方薬の香り漂うチャイナタウン、山積みの唐辛子やスパイスが店頭を賑わすリトルインディア、モスクからコーランの旋律が響くアラブ・ストリート……と万華鏡のような街並みに心を奪われた。当時は古びた建物ばかりで、それがエキゾチシズムをより強くしていた。香水の匂いが漂う、冷房の効いたショッピングモールが林立するオーチャードロードを歩くよりも遥かに楽しかった。

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    フランス、イタリア、スイス、ロシア、中国、インド、タイ、ヴェトナム、韓国、メキシコ、マレー系のニョニャ料理……と、世界各地の料理店の存在も、この国の多様性を物語っていた。ホウカーセンターと呼ばれる屋台街の喧騒、シーズンだったドリアンの強烈な匂いも記憶に鮮やかだ。英国統治時代の名残を映したハイティーがまた、魅力的だった。ランチとディナーの間のティータイムに、ケーキやスナックを楽しむ習慣だ。取材当時、ラッフルズ・ホテルが改装中だったので、やはり英国統治時代の面影残すグッドウッドパーク・ホテルのハイティーを取材した。しかし、この取材は写真撮影だけで、味わうに至らず。

    結果的に、この取材では、深く心に残る味覚に出合えなかった。ただ、忘れ得ぬエピソードをひとつ、残しておきたい。

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    とある日本料理店を取材したときのことだ。ランチ営業を終え、傾き始めた陽光が差し込む店内で、従業員がカーペットに掃除機をかける中、黒いスーツに身を包んだ店長に話を聞いた。一通り取材を終えたあと、多分わたしは、「海外でのお仕事はたいへんですね」といったことを、口にしたのだと思う。すると彼は淡々と、話を始めた。彼は赴任当初、ローカル・スタッフが時間にルーズで、仕事が遅いことに不満を持っていた。事あるごとに従業員を叱責していたあるとき、マレー系マネージャーに言われたのだという。

    「あなた方は数年間だけ、この暑い国で働いて、成果を出せればそれでいいでしょう。しかし、僕たちは生涯、永遠の夏の中で過ごすんです。あくせく働いては、いられません」

    「永遠の夏」という言葉に、店長は、我に返った。自分たちの価値観を押し付けていたことを顧みる契機になり、諸々を改善したのだという。「永遠の夏」は、23歳のわたしの心にも深く刻印された。今でもシンガポール取材を象徴する大切な思い出として、心に在る。

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    🐄ヒンドゥー教徒が80%弱を占めるインドでは、一般に牛肉は食されないと思われがちだ。

    🐄多神教であるヒンドゥー教では「三神一体」を教義としている。その三神とは、ブラフマー(創造神)、ヴィシュヌ(維持神)、シヴァ(破壊&再生神)のこと。中でもシヴァ神の乗り物が牡牛であることから、牛は聖なる動物だとされ、食することは禁忌とされている。

    🐄しかし、だ。人口の約14%を占めるイスラム教徒や、続く2.3%のキリスト教徒は牛肉を食す。合わせると「2億人」近い。わたしの夫やその家族、親戚のように、ヒンドゥー教徒でも牛肉を食する人は少なくない。ゆえに、需要はある。が、あまり大っぴらに牛肉売ってます食べてますをアピールできないのも現実。

    🐂ここバンガロールは、自由に牛肉を食することができる数少ない都市だ。脂身の少ないフィレ肉がおいしいことでも知られ、バンガロール牛といえば、ちょっとしたブランド牛である。

    ※追記:Facebookのコメント欄に友人のデヴィカが書き込んでくれたところによると、ケララ州ではヒンドゥー教徒でもビーフを食べる人が多いらしい。シーフードはじめ、ノンヴェジタリアンが多いのは知っていたが、ビーフが含まれていたとは。

    🐂実はBJPが政権を握る前、すなわち2014年以前は、ムンバイやデリーでも、数少ないとはいえビーフを出すレストランがあった。しかし、2014年以降、ヒンドゥー至上主義の人々が牛肉を食べたり、あるいは売買している人たちを殺害するなどの事件が起こり、なんだかんだで大っぴらには売れなくなった。

    🐂しかし、どの都市にも「秘密の流通網」があり、イスラム教徒はラマザンの時期など、ビーフのケバブを食べていたりする。もっといえば、インドはブラジルに追いつけ、追い越せで、「牛肉輸出量世界1、2位」でもある。でもって、BJPの政治家が牛肉の加工&輸出会社を経営していたりするから、実にツッコミどころが満載の国である。

    ……またしても、前置きが長くなった。

    ✏️今日はミューズ・クリエイションで新しく稼働した「異国での教育を考える」チーム、EduMuseの2回目のミーティングを開いた。場所はSmoke House Deliという、全国展開しているコンチネンタルなレストランのチェーンだ。以前は一人ランチのときに、よく利用していた。

    🍴デリーやムンバイにも、もちろん店舗はあるが、ビーフを出しているのはバンガロールだけだろう。メニューにはフィレとかサーロインという表記になっている。その種類は豊かで、フィレ肉を使ったハンバーガーなどもある。

    🍴集ったメンバーは本日6名プラスキッズ。10時からコーヒーなどを飲みつつ打ち合わせ、次第に空腹に。正午にはランチを注文。シーフードにパスタ、チキンやポークなど、さまざまな料理があるにもかかわらず、4人がビーフに集中。わたしももれなくフィレ肉を。

    🍴あらかじめマリネされているのか、さっぱりとした調理法ながら、ほどよく味がしみていて、おいしい。付け合わせの野菜のグリルもいい塩梅に調理されている。ヴォリュームもほどよい。というか、「少なくない?」というくらい、上品。みな、おいしいおいしいと言いながら、平らげた。ミューズ・クリエイションの課外活動。何かにつけて、食がメインになるのだが、それもまた愉し。

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    🚙友人宅でのパーティに招かれ、久しぶりに市街南部のコラマンガラへ。拙宅からはわずか8km弱にも関わらず、たいてい渋滞に巻き込まれ、軽く1時間はかかってしまう同じ都市でも遠いエリア。今でこそ、Google Mapでリアルタイムに時間を確認しながら移動ができるようになったが、数年前までは、どこへ行くにも時間が読めず、難儀したものだ。

    🍹年中、心地よい気候のバンガロールでは、ガーデンパーティが一般的。もっとも、この時期は朝晩冷え込むので、ストールなどが不可欠だ。米国でもそうだが、インドでのパーティも主には立食。足腰、強くなくては凌げない。インドの場合、更に賑やかさを増すべく、ダンスフロアやバーカウンターが、デフォルテで設置されている邸宅も多い。華やか系のイヴェントではDJを招いてのダンスパーティも同時進行につき、「そこそこ疲れない靴」を選ぶのも大切。

    🕦毎度、食事のタイミングやヴォリュームは、インドならではのスタンダード。招待状には「午後8時半開場」となっていても、誰も8時半には訪れない。遅れて9時半頃ごろに到着しても、ゲストはまだ半分以下。10時半くらいになってようやく、参加者マキシマムの状況に。わたしは完全に「日本人的時間感覚」が染み付いているので、夫が不在時などは、うっかり早く家を出てしまい、指定の時間に到着、パーティに一番乗りということになりかねないので、気をつける必要がある。

    🍷パーティの場ではみな、グラスを片手に、給仕らがサーヴする何種類ものアペターザーをつまみながらの会話を楽しむ。「平均的な日本人の胃袋」では、これですでに、満腹状態になる。

    🍗食事は人気店のケータリングによるブッフェスタイルというのも一般的。ディナーブッフェの準備が整うのは、11時を過ぎてから。わたしは普段、その時間まで待てない上、高カロリーな前菜とアルコールで満腹になるのも憚られるので、いつも軽めに何かを食べて、パーティに赴く。しかし、昨日はそのタイミングを逸して空きっ腹に飲んでしまい、あっというまに酔いが回った。インドでは、パーティに参加するにも、それなりのストラテジー(戦略)が必要なのだ。

    🎂ホストの妻は、プロフェッショナルなペイストリーシェフ。ゆえに、そのための胃袋も開けておかねばならず、一筋縄ではいかない! 12時近くになって、ようやくデザートにたどり着く。フラワーアレンジメントも上品に麗しく、何種類ものケーキがテーブルにセッティングされている。なんとも心踊らされる情景だ。

    🍫彼女が得意とするのは、特にチョコレートを用いたスイーツだとのこと。どれもこれも、見目麗しく、心をときめかされる。ほんの少しずつをお皿に取り分けて、味見をする。良質の素材が味わい深い。とてもおいしい! 「平均的日本人の舌」には、全体的に甘味が強いが、インド人や欧米人にはほどよい甘さに違いない。

    🌊出会いと交流の宝庫でもあるインドのソーシャルライフ。楽しい夜をありがとう!

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    バンガロールはイチゴの季節。昨日は友人らとの今年最初のミーティング。またしても、旬のお菓子、ストロベリーショートケーキの小型8人分を焼いて、リーラ・パレスの会議室へ。みな喜んで食べてくれた。